全身を覆う不快感と冷気で目を覚ました。
大量の寝汗が冷えてパジャマが肌にぴったりと張り付いている。
オレはその場でサランラップのように纏わり付く服を一気に脱ぎ捨てると風呂場に直行した。
湯が沸いていない風呂場は予想以上の寒さで、凍て付くオレの体をさらに鳥肌で飾りつけた。
苛立ちをぶつけるようにシャワーの蛇口を乱暴にひねる。
冷水がなかなか温水に変わらないのがオレの気持ちをさらに苛立たせる。
数十秒してからやっと、シャワーの蛇口から白い湯気が立ち
ようやくオレは心身共に安堵と開放感を感じることができた。
まるで、悪い夢から覚めるように。
自室に戻ると枕もとのケータイのイルミネーションがが青白く点滅していた。
ユカからのメールだった。
なぜだかユカという名前に微かな違和感を感じたような気がしたが
気を取り直して受信トレイを開く。
「もうすぐ着くよー。おきろー!」
もうすぐ着く?こちらに向かっているってこと?
ケータイの時刻表示を見ると午前5時55分だった。
とりあえず家の外に出てみる。
乳白色の朝靄のかかった街角にまだ弱々しい朝日の粒子が低空飛行で降下しはじめている。
空気はきりりと澄み切って、鼻の奥がつーんとした。
通りの100メートルほど向こうから、朝日を背にして一台のママチャリが走ってくるのが見える。
紺色のピーコートに、紺色のスカート。
ユカだ。
彼女はオレの存在に気付くと、はにかみながらこちらの視線から目を逸らし、ペダルを漕ぎ続ける。
ママチャリはぐんぐんとこちらに近づいて、オレの前でキーッっと耳障りなブレーキ音をたてて停まった。
「おはよー」ピンク色に上気したむっちり頬。白い息。満面の笑みのユカ。
彼女は自転車のカゴから大きめの紙袋を取り出してオレに手渡した。
「はい!これ」
「え、なに?」
「なにって?手作りのお弁当食べたいナーって言ったのヒガシノくんでしょ!
覚えてないなら、持って帰りますけど?」
「あ、いや、覚えてます!いただきます!!」
「ふふふ。よろしい。それじゃね!早弁とかしちゃだめだよ!!」
そう言うとユカは颯爽とペダルを漕いで朝日に向かって帰っていった。
オレ「手作りのお弁当食べたいナー」なんて言った覚えがないんだけど
でも、なんかいいなぁ。こーゆーの。
オレがユカの手作り弁当を持ってだらしなく頬を緩ませ登校すると
廊下で野球部期待の女スラッガー・金井ハルカを見かけた。
170cmを越える身長と定規を入れたように直角に伸びた背すじ。
ジャージ姿に一つに纏めた長い黒髪。
遠くからでもその姿は異彩を放っており
男子生徒はややビビりつつ遠巻きにその姿を眺め
女子生徒は憧れの視線を彼女に向ける。
彼女はオレの視線に気付いたらしく、オレの姿を認めるとこちらに鋭い眼差しを向けた。
怒ってる?オレに?なんで?
彼女はこちらにずんずん近づいて来ると、防御体制のオレにすれ違いざまにこう呟いた。
「前日のことは夢だったということにしておいた」

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大量の寝汗が冷えてパジャマが肌にぴったりと張り付いている。
オレはその場でサランラップのように纏わり付く服を一気に脱ぎ捨てると風呂場に直行した。
湯が沸いていない風呂場は予想以上の寒さで、凍て付くオレの体をさらに鳥肌で飾りつけた。
苛立ちをぶつけるようにシャワーの蛇口を乱暴にひねる。
冷水がなかなか温水に変わらないのがオレの気持ちをさらに苛立たせる。
数十秒してからやっと、シャワーの蛇口から白い湯気が立ち
ようやくオレは心身共に安堵と開放感を感じることができた。
まるで、悪い夢から覚めるように。
自室に戻ると枕もとのケータイのイルミネーションがが青白く点滅していた。
ユカからのメールだった。
なぜだかユカという名前に微かな違和感を感じたような気がしたが
気を取り直して受信トレイを開く。
「もうすぐ着くよー。おきろー!」
もうすぐ着く?こちらに向かっているってこと?
ケータイの時刻表示を見ると午前5時55分だった。
とりあえず家の外に出てみる。
乳白色の朝靄のかかった街角にまだ弱々しい朝日の粒子が低空飛行で降下しはじめている。
空気はきりりと澄み切って、鼻の奥がつーんとした。
通りの100メートルほど向こうから、朝日を背にして一台のママチャリが走ってくるのが見える。
紺色のピーコートに、紺色のスカート。
ユカだ。
彼女はオレの存在に気付くと、はにかみながらこちらの視線から目を逸らし、ペダルを漕ぎ続ける。
ママチャリはぐんぐんとこちらに近づいて、オレの前でキーッっと耳障りなブレーキ音をたてて停まった。
「おはよー」ピンク色に上気したむっちり頬。白い息。満面の笑みのユカ。
彼女は自転車のカゴから大きめの紙袋を取り出してオレに手渡した。
「はい!これ」
「え、なに?」
「なにって?手作りのお弁当食べたいナーって言ったのヒガシノくんでしょ!
覚えてないなら、持って帰りますけど?」
「あ、いや、覚えてます!いただきます!!」
「ふふふ。よろしい。それじゃね!早弁とかしちゃだめだよ!!」
そう言うとユカは颯爽とペダルを漕いで朝日に向かって帰っていった。
オレ「手作りのお弁当食べたいナー」なんて言った覚えがないんだけど
でも、なんかいいなぁ。こーゆーの。
オレがユカの手作り弁当を持ってだらしなく頬を緩ませ登校すると
廊下で野球部期待の女スラッガー・金井ハルカを見かけた。
170cmを越える身長と定規を入れたように直角に伸びた背すじ。
ジャージ姿に一つに纏めた長い黒髪。
遠くからでもその姿は異彩を放っており
男子生徒はややビビりつつ遠巻きにその姿を眺め
女子生徒は憧れの視線を彼女に向ける。
彼女はオレの視線に気付いたらしく、オレの姿を認めるとこちらに鋭い眼差しを向けた。
怒ってる?オレに?なんで?
彼女はこちらにずんずん近づいて来ると、防御体制のオレにすれ違いざまにこう呟いた。
「前日のことは夢だったということにしておいた」

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